端材を使った社内冶具の作製でNCプログラムの勉強と機械加工の練習1

端材を使ってストッパーの作成をします。

製品の作製と違って、冶具の作製は多少の失敗をしても不良品にならなかったり、納期に融通が利いたり、NCプログラムの勉強や機械操作の練習に向いています。

端材や不便な加工など把握しておき、空いた時間などに治具の設計や作製をしましょう。

下の画像が今回加工に使う端材の寸法になります。

端材選択

端材から作成する冶具の寸法を決める

まずはベッドへの取り付け部分を作成しますが、自分で治具を作製するので図面がありません。

どんな冶具を作るか端材と段取りをイメージして形状と寸法を決めます。

外形とベッドへの取り付け溝、ストッパーになる柱の取り付け穴を下の画像の寸法、板厚は30.0で加工します。

端材から形状のイメージと寸法

ワークの取り付けとワーク座標系設定

ワンチャックで形状加工を終わらせるために5mm以下の取り付け高さになる段取りをバイスでセットします。

バイスに敷板取り付け

ワークを取り付ける前にタッチセンサーを使ってバイスの口金でX軸とY軸の加工原点に設定します。

タッチセンサーで基準だし

Z軸もバイスの口金で加工原点を設定しますが、バイスを締めると口金の高さが変わるのでワーク取り付け後にテスターで高い所を探します。

バイスの口金の平面確認作業

高い所付近でタッチセンサーを使ってZ軸の加工原点に設定します。

高いところ探してZ軸基準だし

加工に使う座標系はG54を使います。
この後、取り代など増分するので使わない座標系のG55に同じ数値を入力して控えておきます。

増分前に座標系の控え

G54のワーク座標系Xに取り代の9.5を増分値入力
G54のワーク座標系Yに取り代の7.5をマイナス増分値入力
G54のワーク座標系Zに仕上がり寸法+0.2の30.2を増分値入力します。

増分した数値を、使わない座標系のG56に入力して控えておきます。

座標系設定、増分値の控え

第一工程の確認

  1. フェイスミルで上面加工
  2. スターティングドリルで内形加工用スタートホール加工
  3. ドリルで内形加工用スタートホール加工
  4. エンドミルで内外形加工
  5. 面取りカッターで内外形面取り加工
  6. スターティングドリルで取り付け穴加工
  7. ドリルで取り付け穴加工
  8. エンドミルで取り付け穴ザグリ加工
  9. スターティングドリルで取り付け穴ザグリ穴面取り加工

第一工程は9加工になりますが、4番のエンドミル外形加工をテスト加工して取りきれるか確認します。

第一工程のNCプログラム作成と加工

外形が取りきれるか確認するためエンドミルで上面を少しだけ加工します。
(プログラムの作成は後程紹介します)

左下が大きく欠けてしまいました。
使用上、問題がなさそうなので、このまま加工してもいいですが取り代がたくさんあるのでワーク座標系で調整します。

Xに2.0mm Yに5.0mmを増分して加工を進めます。

端材で削り残しの確認

1 フェイスミルで上面加工

G00とG01を使って上面をフェイスミルで加工します。

フェイスミル加工プログラム

フェイスミル加工後

2-3 ドリルでスタートホール加工

G81とG83を使ってスタートホールの加工します。

12.5Dスタートホール加工プログラム

端材にドリルで穴加工

4 エンドミルで内外形加工

G01、G02、G03を使ってエンドミルで内外形状加工をします。

Φ12.0エンドミル内外形状加工プログラム

Z-7.5
Z-15.0
Z-22.5
Z-30.0の4回で加工しました。

エンドミル形状加工後の側面

最終加工深さが一回だと削り残しがあるので、もう一度Z-30.0で加工(ゼロカット)します。

エンドミルゼロカット

加工前と比べると寸法が安定し、面も綺麗になります。

エンドミルゼロカット後の側面

5 面取りカッターで内外形面取り加工

エンドミルで内外形加工に使ったプログラムを使って加工します。

面取り加工プログラム

面取りの大きさは加工深さで調整します。

面取り加工後の確認

6 スターティングドリルで取り付け穴加工

固定サイクルG81を使って加工します。

センターツール 加工プログラム

最初に0.1程度で加工をして穴位置の確認をします。

揉みつけ確認

7 ドリルで取り付け穴加工

固定サイクルG83を使って加工します。

Φ5.5穴加工NCプログラム

8 エンドミルで取り付け穴ザグリ加工

固定サイクルG83を使って加工します。

穴底でドウェルを設定する場合、60秒÷回転数で計算します。
S800の場合
60÷800=0.075
穴底で一回転の場合P75で設定します。

Φ9.5ザグリ加工NCプログラム

加工径、加工深さは↓で確認してください
キャップボルト(六角穴付きボルト)ザグリ穴加工寸法一覧

Φ11.0ザグリ加工

9 スターティングドリルで取り付け穴ザグリ穴面取り加工

下穴の面取りを固定サイクルG81を使って加工、ザグリの面取りをG03円弧補間とG41工具補正左を使って加工します。

センターツール面取りNCプログラム

指定した補正番号D11に2.0を入力します。

面取り加工用オフセット入力

センターツールで面取り加工後

これで第一工程の作業は終了です

同じ端材が、もう一個あったのでその端材も加工しました。
加工時間を測定したところ22分でした。

第二工程の確認

  1. フェイスミルで上面加工
  2. 面取りカッターで内外形面取り加工
  3. スターティングドリルで取り付け穴面取り加工

ワークの取り付けとワーク座標系設定

X軸とY軸のワーク座標系は第一工程の時にG55の座標系に入力した数値を使います。

Z軸は敷板にタッチセンサーを当てて入力します。

第二工程Z基準測定

第一工程と同じくG55に同じ数値を入力して控えておきます。
G54のワーク座標系Zに仕上がり寸法の30.0を増分値入力します。

第二工程ワーク座標系設定

基準を取ったバイスの口金に敷板を当ててストッパーの代わりにして取り付けします。

敷板をストッパーにして取り付け作業

1 フェイスミルで上面加工

第一工程で使用したプログラムを、そのまま使用して加工します。
フェイスミル加工NCプログラム

X軸の基準面が気になる場合は、この加工後に確認します。

フェイスミル加工後基準出し作業

2 面取りカッターで内外形面取り加工

第一工程で使用したプログラムを、そのまま使用して加工します。

加工深さをZ-6.0からZ-6.5に変更して面取りの大きさを変えました。

第二工程面取りNCプログラム

第一工程Z-6.0での加工との比較画像です。

第一工程と第二工程の比較

3 スターティングドリルで取り付け穴面取り加工

第一工程で使用したプログラムを、そのまま使用して加工します。

第一工程ザグリ底面の加工プログラムなのでアプローチ点と加工深さの変更が必要です。

加工深さをZ-8.25からZ-3.0に変更
アプローチ点をR-5.5からR0に変更

第二工程下穴面取りNCプログラム

センターツール面取り加工プログラム

これで第二工程の作業は終了です。
加工時間は5分でした。

ストッパーのベッドへの取り付け部分完成品

ストッパー土台完成品